前回に引き続き、今回(その2)はSurface Ablation(表層)系の術式の違いに触れてみたいと思います。なお、相変わらず各術式の基本部分にはあまり触れませんので、必要に応じて病院の説明文などをご覧ください。
■表層系
表層系には、フラップ(上皮弁)を作成するLASEK、Epi-LASIK、フラップを作成しないPRKがあります。その他RK、AKなどもありますが、ここでは触れません。
○LASEK
真空吸着式のトレパンを使用し、角膜上皮に8〜8.5mm径の切開を加え、切開線より0.5mm大きな径を持つカップを装着。18〜20%濃度のエタノールを流し込み約30秒間作用させたあと、直ちに洗浄を行います。その後、専用のスパーテルを用いて上皮を持ち上げフラップを作成、エキシマレーザーを照射します。
・特徴
アルコールを使用する事で、上皮をボーマン層から基底細胞ごと剥離する事が可能です。そのため、ボーマン層がキレイな状態で温存されることで理想的な照射面が得られます。Wavefront照射を行うためには最も適した照射面と言えます。なお、アルコールを作用させても70%程度の上皮細胞が残存すると言われています。フラップがあることで疼痛(とうつう:持続的な強い痛み)が少ないと言われていたが効果はあまり無いばかりか、フラップを破棄した方が回復も術後経過も良好な事が分かってきている(破棄すればASA, ethanol-PRK)。いずれにしても上皮は再生するのでフラップの有無には、あまり意味はありません。
なお、アルコール濃度に関し、様々な研究が行われてきましたが、40%までであれば眼に対する影響もレーザー照射への影響にも有意な差が無いという見解があります。また、反応時間に関しては、ある一定時間までは上皮が70%程度の生存率にも関わらず、たった5秒違うだけでほぼ全滅するという事が分かっている。そのため、アルコールの反応時間の見極めには、非常に高度なテクニックが必要である。
また、照射面の外側角膜、結膜に対してアルコールの影響を及ばさないように注意が必要。MMCの使用に関しては、アルコールとMMCの反応に関しては安全性が確認されていないため、通常は使用しない。
最後に、フラップを破棄してASAへ移行すると、この術式が表層系の中では最も痛いと言われている代わりに、最もヘイズが出にくいとも言われています。
○Epi-LASIK
エピケラトームという機械式カッターで上皮基底細胞直下にフラップを作成する。フラップを破棄すればEpi-PRK、ASAになる。
・特徴
マイクロケラトームのブレードと異なり、プラスチック等の鈍い刃で切断します。機械式のため、上皮基底細胞層/翼状細胞層内、あるいはボーマン層まで含んだ状態でフラップが作られてしまう可能性がある。そのため、医師の高い練度が要求される。また、フラップが非常に薄いためにフラップが伸長しており、元どおりに戻せず、角膜ベッドからはみ出してしまうのが通常。それでも、上皮フラップは再生するので特に問題は無いが、上皮の再生が遅れたり、ヘイズの原因になったりするため、最近は破棄してEpi-PRKに移行するケースが多い。
●PRK
PRKには、transepithelial-PRK、conventional-PRK、ASA(Advanced Surface Ablation)があります。
○transepithelial-PRK
上皮をボーマン層までエキシマレーザーのPTKモードで蒸散させ、ボーマン層からPRKモードに切り替えます。また、半分ほどレーザーで蒸散させた後に器具を使ってボーマン層を露出させる場合もあります。
・特徴
一般的にPRKといえば、眼球に触れないノータッチ法と言われるPTK-PRKの事を差します。特別な器具が要らないため、最もコストが安くつきます。また、吸引を行わないため、眼疾患などにより吸引に耐えられない場合でも施術が可能です。ただし、この術式が最もヘイズが出やすいと言われているだけでなく、上皮の過形成も強く出る傾向があります。また、上皮から照射を行うため他の術式に比べて誤差が大きい。以上のように問題が多いため、近年では、ノータッチ法は眼疾患などの特別な問題が無い限りは、術式としては推奨されない。よって近年のPRKは、何らかの方法で上皮剥離を行う術式をさす場合が多い。
○conventional-PRK
ゴルフメス等の器具を使って上皮細胞を取り除き、ボーマン層を露出させます。
・特徴
器具を使ってボーマン層を露出させるため、アルコール等の薬剤による影響を心配しなくてよい。そのかわり、ボーマン層を無傷で均一に露出させるためには高度な技術が必要です。上皮細胞が残存していたり、ボーマン層を削ってしまうと、不正乱視や矯正誤差が発生する可能性がある。また、器具の過度な摩擦によりヘイズが起こるとも言われている。
○ASA
ethanol-PRK, Epi-PRK、その他の方法によりボーマン層を露出させフラップを残さない、その他PRKを総してASAと言います。
○表層系共通の特徴
近年、Wavefront照射の完成度が上がってきたため、フラップによる収差の影響を受けない表層系が見直されつつあります。Wavefront照射のメリットを最大限に受けられる術式です。
術後角膜知覚は、ほとんど変わらず、わずかに1週間後をピークに減少しますが、約3ヶ月で元に戻ります。ドライアイに関しては、BUT、涙液量は術前とほとんど変わりません。表層系角膜上皮のバリア機能は、術後1週間をピークとしてわずかに下降し、約3ヶ月で元に戻ります。いずれの表層系術式も、ボーマン層を失うため、術後3ヶ月を過ぎた頃から角膜後面の曲率半径が小さくなり、その後半年ほどかけて前面にわずかに(20μm程度)移動します(角膜が膨らむ)。
○表層系共通のメリット
角膜ベッドが多く残せる、ドライアイが強くても受けられる、瞼裂が狭小でも受けられる、フラップトラブルが無い、施術1年後以降の「見え方の質」が、レーシックよりも良い場合が多い(Aspheric profileまたはWavefront照射がベター)
○表層系共通の問題
疼痛、視力回復が遅い、角膜上皮細胞の過・不均一形成による近視化・不正乱視、術後精度が悪い(上皮再生量の予測が困難、1年ほど角膜形状の変化が続くため)、ヘイズ、エンハンス(再手術)の調整が困難、など。
この中で特に問題になるのがヘイズです。そのため、-5.0D以上の患者に対してはヘイズを抑えるためにMMCの塗布が推奨されていますが、現実的には長期安全性が確立していない抗がん剤のため、あまり使用されていない(というか、強度近視に対しては、日本では施術しないケースが多いため、MMCまで使う必要が無いとも言える)。
また、100μmをこえるような切除が必要な強度近視の患者にこそ理想的な術式なのだが、現実的には100μmを超えるような切除を行うと、完治しないヘイズを伴う場合があり、最強度近視への症例は少ない。もっとも、最近ではLASIKでも100μm以下のフラップが作成可能なため最強度近視であってもLASIKを受けられる場合が多いため、あえてリスクを冒さないという傾向は強い。なお、軽度近視の場合は、さほど心配する必要はありません。
また、角膜上皮の過形成により、わずかに近視が残る場合があるだけではなく、エンハンスを行っても5年程度で元に戻ってしまう場合もあり、効果/調整の面からエンハンスは難しい。フラップを作らないから角膜厚に余裕があり、再手術も大丈夫。とは言ってみても、現実的には調整が難しいのです。特に、Wavefrontの再手術は(レーシックにおいても)トポリンクをサポートしていないようなエキシマレーザーでは「出来ない」と思っておいたほうが良いです。さらに、表層系のエンハンスは、ヘイズが出る確率が高いためMMCを使用する事が推奨されています。
なお、-7.0Dを超える患者にとっては、効果や切除量の関係から、ほとんどの人がWavefront照射の適応も無いし、ヘイズの問題もあり表層系は望んでも叶わない場合が多いです。それでも、最新鋭レーザーではスタンダード照射とレーシックの組み合わせだけでも、十分に1.0以上を狙える確率が高いです。何をもって良しとするのかは個人差がありますが、多くを望みすぎない事が、屈折矯正手術で満足するコツとも言えます。
そして、この表層系で潜在的にもっとも問題なのは、受ける側の性格です。ヘイズ予防のために1年もの間、紫外線対策、ステロイド点眼を続けなくてはなりません。特にステロイド点眼は、指示通り(回数、毎回振ってから点眼などの用法)の点眼を怠ると、ヘイズが残ったり、一度消えたヘイズが再発したりします。自分の大事な眼のことだから、自分は絶対大丈夫!と思っていても、ヘイズの自覚が無ければ、怠ってしまうのが人間なんです。特に女性は、おおらかな方が多いので、視界に影響が出るようなヘイズが残っていても検査に行かない方がいらっしゃるようです。少なくともうちの妻には無理な要求です(笑)
○角膜屈折矯正手術すべてに共通の問題
レーザーを使用する術式共通の問題としては、セントラルアイランド、コールドスポット、偏心照射などがあります。
以下の関連記事もご覧ください。


コメント (4)
Jackさんゴメンナイ。m(_ _)m
せっかく当事者にお越しいただいたのに、手違いでコメント消しちゃいました。。(汗
でも、Jackさんの行動は、学術的に「人間である」ことが証明されたって事ですよ!(笑)
サイボーグかと思ってましたが、まだ人間だったようです(爆)
投稿者: Raptor(管理人) | 2007年07月06日 20:05
日時: 2007年07月06日 20:05
あぁ!これは嫌がらせですね!!
なんて^^
別に気にしてませんよ・・・多分
まあ、「点眼は大事ですよ」っと言う事が結論ですね!
投稿者: Jack | 2007年07月09日 19:23
日時: 2007年07月09日 19:23
あわわわわっ(滝汗
いえいえ、結論は、「人間には無理な注文」ってことですよ(笑)
投稿者: Raptor(管理人) | 2007年07月09日 21:54
日時: 2007年07月09日 21:54
So ... nice blog. Exposure outside of the cornea is really should be careful not to exert an influence on conjunctival Isobaarukoru. The reaction of alcohol MMC, MMC has not been confirmed if it is safe for use, usually do not use.
投稿者: セロケン | 2011年02月03日 18:59
日時: 2011年02月03日 18:59