屈折矯正手術には、大きく分けて2種類あります。角膜に手を加える角膜屈折矯正手術と、眼内レンズ(IOL)です。IOLに関しては、老眼治療など膨大な量の話になるので、そのうち(いつになることやら・・(^^;;)書きたいと思います。
さて、角膜屈折矯正手術には様々な術式があるのですが、角膜実質層にフラップを作成するLASIKと、上皮細胞部に対してフラップを作成したりフラップを作らずに施術を行うSurface Ablation(表層)系に分かれます。
今回(その1)は、LASIKの術式の違いに触れてみたいと思います。なお、各術式の基本部分にはあまり触れませんので、必要に応じて病院の説明文などをご覧ください。
■LASIK
○レーシック(LASIK)
マイクロケラトームと呼ばれる、機械式カッター(電動カンナ、機械式角膜切開刀)を使用しフラップを作成します。もっとも一般的な術式です。
・特徴
ブレードの改良がすすみ、近年では100μm以下のフラップ作成も可能になりましたが、機械式のため誤差が±20μmほどあります。これは医師の練度に関係ありません。物理的な問題です(ブレードの製造ロットによってもバラツキがあります)。例えば、100μmのフラップを作ろうとしたときに、120μmのフラップが出来る事もあれば80μmの場合もあるということになります。
医師の練度に関係あるのは、同じ厚さに作れるかどうかです。練度が低い場合は、断面が波打ったような、厚さにムラがあるフラップになります(念のため言っておきますが、練度がいくら高くても、全くムラのないフラップを作成する事は出来ません。波打ってなくても、ヒンジ側とその反対側で厚さが20μm違う、断面がナナメになるなんて当たり前の範囲です)。断面が非常に滑らかなため、10年後でもフラップの再リフトが行えると言われています。フラップ作成時の吸引圧は80mmHgから100mmHg程度。吸引時間は約5秒(吸引リングの取り付け/取り外し時間を入れると約25秒)。
角膜の曲率半径が平均的でない場合(フラット、スティープ)や、術者の練度が低いと、ボタンホール(フラップ中心部に穴があく)、フリーキャップ(ヒンジが切れてしまう)、角膜穿孔(内皮細胞や虹彩まで切り込んでしまう)などが発生するおそれがある。
○イントラレーシック(Intra-LASIK)
FS(FemtoSecond:1フェムト秒=1000兆分の1秒)レーザーと呼ばれる近赤外線レーザーを使用してフラップを作成するレーシックです。FSレーザーは、熱を発生しない衝撃(振動)波レーザーです。しかも、細胞を切り離す事が可能なぐらい精巧なレーザーのため、生きたまま1つの細胞を切り出すことも可能です。FSレーザーとして最も普及しているIntralase社のレーザーを使用するため、このように呼ばれます。Femto-LASIKとも言います。
・特徴
非常に薄い100μm前後のフラップを作成可能です。人の手が入らないため、フラップ厚が、より均一(誤差±5μm)に作成可能です。ミルフィーユ構造をした角膜実質層の層間を、レーザーの衝撃波で引きはがしていくイメージです。そのため、層間角膜炎(DLK)が強く発症すると言われていますが、現在は技術改良と術後管理が進み、2年ほど前に比較すれば安定してきています。また、層間で比較的強い炎症が起こることによりフラップ間の癒着が強くなり、そのため5年後には再リフトが困難と言われています。また、マイクロケラトームを使用するよりもフラップ作成時に発生する高次収差の増加を抑える事が出来ると言われています。フラップ作成時の吸引圧は30mmHgから35mmHg程度。吸引時間は約20秒(吸引リングの取り付け/取り外し時間を入れると約40秒)。
ボタンホール、フリーキャップ、角膜穿孔などは理論的に起こりにくいと言われているが、米国での報告によると、Intralase社のFSレーザーにおける症例でフリーキャップが発生している。なお、メーカーによる再現テストで再現しなかったため原因不明のままである。
○共通のメリット
痛みが少ない、視力の回復が早い、角膜上皮下混濁(ヘイズ)が発生しにくい
○共通の問題
フラップ下異物、角膜上皮のフラップ下侵入(epithelial ingrowth)、DLK、SPK(点状表層角膜炎)、角膜上皮剥離、近視の戻り(Regression)、角膜エクタジア、フラップのシワ、など。
レーシック、イントラレーシックいずれの場合も、フラップ作成中に機械の不具合により停止してしまう危険性があるため、複数の機材を術前に準備する事が推奨されている。
フラップの皺は、フラップ表面だけにみられる皺を「ミクロな皺」、フラップ全体が波打っている場合を「マクロな皺」と言います。眼瞼圧(まぶたが角膜を押さえる力)が高い男性の方が発生しやすいと言われています。なお、近視治療では中心部にミクロな皺が発生しても正常とされており、ミクロな皺は視機能に影響を及ぼすことはほとんどありません。また、マクロの皺の場合は、フラップのずれを伴なわないシワであれば、再洗浄しても効果は期待できません。見え方に影響が出たとしても1〜2年経過観察するしか対応策は無い。医師がフラップのシワに対して、再洗浄せずに「経過を見ましょう」というのは、こういう理由があります。もちろんズレが発生した場合は、直ちに、出来るだけ早く再洗浄し位置合わせをしなければなりません。
術後角膜知覚は、術後急激(8から10分の1)に下がり、半年から1年かけて元に戻ります。ドライアイに関しては、BUT(涙液層破砕時間)が術後3ヶ月ほど低下し、これも元に戻るのに半年から1年必要です。涙液量(Schirmer値)は、もともと多くない人(値が9以下)は、術後もほとんど変化はありませんが、6ヶ月以降に少し上昇します(ドライアイが少し改善傾向)。もともと多い人(値が10以上)は、術後半年ほど急激に涙液量が下がるため、術後に初めてドライアイを意識する場合があります。これは、半年から1年ほど経つと徐々に回復しますが、元通りの涙液量には戻りません。角膜上皮のバリア機能(上皮細胞は、機能していれば細菌どころか涙さえ通さない)は、術後1ヶ月をピークに下降し、半年から1年かけて元に戻ります。
○角膜屈折矯正手術すべてに共通の問題
レーザーを使用する術式共通の問題としては、セントラルアイランド、コールドスポット、偏心照射などがあります。
○おまけ
100μm以下の実質層フラップを作るレーシックを総じてSBKと言います。
以下の関連記事もご覧ください。
- 屈折矯正手術の術式について(その2-Surface Ablation)
- 屈折矯正手術で使われる薬剤
- レーシックの習熟曲線
- 見え方の質 “Quality of Vision”
- 眼の紫外線対策の新常識が明らかに
- 病院の選び方

